ただもの、だんだん♪ 『しまね縁タメ』編集部(@shimanentame)です。
京都・金沢と並び「日本三大菓子処」の島根県松江市。
お茶・和菓子文化が浸透する松江で、さらに不昧公(ふまいこう)三大銘菓の一つに数えられているのが老舗和菓子店 彩雲堂の「若草」です。
僕はここぞという時の手土産で買いますね。
そんな若草の新作「よもぎ若草」が、創業150年を記念して2024年9月1日から発売されます。
一般販売前に試食する機会をいただいたので、通常の若草と食べ比べをした感想を話していきますね。
松江三大銘菓の一つ「若草」とは
引用 彩雲堂
茶人としても有名な松江藩の七代目藩主 松平治郷 公(通称:不昧公)が好んでいた和菓子です。
不昧公の詠んだ和歌から命名されています。
『曇るぞよ、
雨降らぬうちに積みてこむ
栂尾山の春の若草』
しかし、不昧公が春のお茶会で「若草」という茶席菓子を出した記録はあるものの、不昧公没後どんなお菓子だったのかは謎でした。
この謎を解明すべく、1900年代(明治時代中期)に彩雲堂の創業者 山口善衛門が文献を読み解き復刻しました。
江戸時代に詳しい茶道の先生や古老に話を聞きに回って、それはそれは大変だったとか。
現在目にする餅に砂糖を加えて練りこんだふっくらとした求肥に緑色の寒梅粉をまぶした逸品「若草」の味が、100年以上も受け継がれ、松江の代表銘菓として全国に知られています。
彩雲堂「若草」の特徴
①奥出雲の良質なもち米を使用
奥出雲町の山間部は、寒暖差がありコシの強いもち米になります。
②こだわりの製法
工場内の石臼で水挽きし、銅窯でじっくり練り上げます。
③心を込めて衣をまぶす
手作業でしかできない職人技。
彩雲堂の新作「よもぎ若草」とは
彩雲堂150周年記念として2024年9月1日から新発売されるのが「よもぎ若草」です。
「よもぎ若草」の開発秘話に迫っていきましょう。
大変な苦労の末現代に蘇った「若草」ですが、文献(太田直行「島根民藝録 出雲新風土記」)によると『芽出し蓬汁を加えていた』という記述がありました。
しかし、現在の「若草」ではよもぎは使用していません。
より江戸時代の製法を再現しようと、2018年には不昧公200年祭を記念しよもぎ粉末を使用した「復刻若草」を販売しました。
好評だった一方、流通しているよもぎ粉末は外国産のもの。
国産、できれば地元産のよもぎ粉末を使えないかと模索を続けていたそうです。
約3年の月日をかけ、松江市島根町の「潮風グループ」のよもぎを出雲市の「出雲精茶」が粉末化させた「よもぎ若草」を商品化しました。
まさに、産官学が連携し島根県の力を結集したのが「よもぎ若草」と言えるでしょう。
代表銘菓の地位に甘んじることなく、アップデートさせていくのすげぇ~
販売開始前の「よもぎ若草」お披露目会に参加
2024年8月30日、彩雲堂にて「よもぎ若草」お披露目会が開催されました。
ご招待いただいたので、山陰の各報道関係者に混じってスマホ片手にビビりながら参加。笑
松江市の上定昭仁市長と松江商工会議所の田部長右衛門会頭が、試食されます。
よもぎ若草のプレゼンテーション
さぁ、お披露目会スタートです。
まずは、彩雲堂 山口周平社長による「よもぎ若草」の開発に関するお話です。
- 不昧公と若草との関係
- 初代・山口善衛門の若草復活の経緯
- 若草の特徴
- よもぎ若草の開発秘話
と、知りたかったお話が盛りだくさん。
若草→復刻若草(2018)→よもぎ若草(2024)と、試行錯誤の努力が伝わってきました。
若草のルーツがわかって興味深かったです。
メモが止まらねぇぜ。
若草・復刻若草・よもぎ若草の違い
お話の中で特に興味深かったのは、通常版の若草との違いでした。
実は、お餅部分は既存の若草と同じ。
ハーブの女王とも呼ばれる蓬の優しい香りと自然な色合いのついた衣が違います。
若草・復刻若草・よもぎ若草のそれぞれの違いは以下のとおり。
若草 | 復刻若草 | よもぎ若草 | |
色合い | 鮮やかな若緑色 | 深い緑色 | 深い緑色 (復刻若草より明るい) |
着色料 | 合成着色料 | よもぎ粉末 (外国産) | よもぎ粉末 (島根産) |
経時変化 | ほぼ変色しない | 紫外線で変色する | 紫外線で変色する |
風味 | 寒梅粉の味 | 乾燥させたよもぎの味 | よもぎ本来の味 |
若草とは合成着色料とよもぎの違い、復刻若草とは外国産と島根産の違いだね!
衣づけのデモンストレーション
続いて、出来立てほやほやの若草を試食するため、衣づけのデモンストレーションが始まります。
職人さんが手際よく衣づけをされていました。
よもぎ粉末の衣づけは、手作業でしかできないそう。
毎日たくさんの和菓子を作る必要があるので、てっきり機械化していると思っていました。
技術が絶えることなく継承されていってほしいです。
衣づけの最中、よもぎのいい香りが香ってきました。
「よもぎ若草」への期待が膨らみます。
ゲストの試食会と感想
「よもぎ若草」がゲストの席に運ばれました。
できたての「よもぎ若草」はもっちりしているので、切るのにお二方とも苦労されていました。笑
気になる食レポ
色は今までの若草より深くて濃厚。 よもぎの味も香りもしっかり感じる。 抹茶にも合う。 | 普通の若草は砂糖が強くボソッとしているが、よもぎ若草は自然の甘さとよもぎの香りを感じて、フワッとしている。 |
「よもぎ若草」は甘味が抑えられている分、抹茶はもちろん紅茶やコーヒーにも相性がいいとのこと。
そこで和菓子屋では珍しい光景ですが、紅茶も用意されよもぎ若草と一緒に召し上がっていました。
紅茶にも合うと大好評!
「ウイスキーにも合うのでは?」と意見もありました。
お茶と和菓子という定番が、「よもぎ若草」の登場によって変わるかもしれませんね。
記念撮影をして、「よもぎ若草」のお披露目会が終了です。
彩雲堂 山口社長が語る「よもぎ若草」の展望
――新作「よもぎ若草」への想い
お茶文化を発展させていくことは、当社の使命です。
「若草」を自然豊かな島根の土地の恵みを使って、当時のままに復活するのが長年の夢でした。
実現までに3年を要しましたが、地元関係者の皆様にお力添えをいただき、島根町産のよもぎ粉末を使った「よもぎ若草」が完成しました。
砂糖以外は島根県産で、生産者の顔が見える商品になったと思います。
優しい味と色合いをお楽しみいただけば幸いです。
――大変だったことは?
よもぎの加工には苦労しました。
特によもぎの綺麗な緑色を残すことと香りを残す処理は大変でした。
自然のよもぎを使用するので、収穫は年に1回しかできないことも商品化に時間がかかった理由です。
――「若草」と「よもぎ若草」は今後どうなるのか?
しばらくは並行して販売していきますが、ゆくゆくは「よもぎ若草」だけを販売していきたいと考えています。
和菓子はお茶文化のものだけじゃなくて、若い人にも日常的に楽しむものになってほしいです。
「よもぎ若草」を通して、従来の抹茶という枠だけでなく紅茶やコーヒー、お酒といった様々なペアリングを提案していきたい。
「若草」と「よもぎ若草」を食べ比べた感想
待ちに待った「よもぎ若草」の試食です。
よもぎの香りがして、甘みが口の中に広がります。
おいしいです。
( ^ω^)・・・あれ?若草とどう違うっけ?
絶望的な食レポしかできなかったので、従来の若草を帰りに買って食べ比べました。
見た目 | 若草 | よもぎ若草 |
---|---|---|
色合い | 鮮やかな若緑色 | 深い緑色 |
着色料 | 合成着色料 | よもぎ粉末 (島根産) |
経時変化 | ほぼ変色しない | 紫外線で変色する |
風味 | 寒梅粉の味 | よもぎ本来の味 |
値段(税込) | 3個680円 | 3個756円 |
まず、やはり見た目が違いますね。
「若草」だけを見ていたときはあまり気になりませんでしたが、「若草」はめっちゃ鮮やか。
「よもぎ若草」は、色が深くて自然な色合いと言われて納得する色合いです。
香りは「若草」はほぼ無臭。
「よもぎ若草」は作りたてのほどではないですが、よもぎ餅みたいな香りがします。
食感は、「若草」は衣の砂糖!って感じで、噛むとジャリジャリっとする和菓子!って感じ。
口の水分持っていく系です。
「よもぎ若草」は上品な甘さがフワッと口に広がっていきます。
さらに香りが鼻に抜けて、よもぎの風味を感じることができます。
求肥(お餅部分)は、弾力があってもっちり。
直接インタビューして聞いたとおり違いは感じませんでした。
独断と偏見で感想を言うと、「よもぎ若草」の方が好き!
ただ、値段がちょっと高いのでご褒美の時に買いたいですね。
どちらもおいしいので、ぜひ召し上がってください。
衣は落ちやすいので注意です。(僕はもっぱら一口派)
まとめ:「若草」と「よもぎ若草」を食べ比べしよう
今回の記事では、彩雲堂創業150年を記念して2024年9月1日から発売される「よもぎ若草」の紹介をしてきました。
- 「若草」は不昧公好みの和菓子。しかしどんな和菓子かは謎
- 彩雲堂の創業者が若草を復刻し現代に受け継がれている
- 文献によると若草にはよもぎの煮汁を使っていたことが発覚
- 2018年に外国製のよもぎ粉末を使った「復刻若草」を販売
- 今回原材料を地元産にこだわり「よもぎ若草」を2024年9月新発売
彩雲堂の社長が話すとおり、今後は「若草」販売されなくなる可能性もあります。
そうなると若草=よもぎ若草として、松江のお茶文化に影響を与えるかもしれません。
「よもぎ若草」は、甘さが控えめになったことで抹茶だけでなく紅茶やコーヒーにも相性がよくなりました。
「よもぎ若草」が松江で浸透することで、茶席の抹茶はもちろん、地元のカフェでコーヒーや紅茶のお供になったり、お酒とともに楽しまれる日もくるかもしれません。
まさに、松江和菓子界の異端児となれるのか、今後に期待していきましょう。
店名 | 彩雲堂 本店 |
---|---|
住所 | 〒690-0064 島根県松江市天神町124 ▪︎JR松江駅より徒歩9分 |
TEL | 0852-21-2727 |
営業時間 | 9:00〜18:30 |
定休日 | 不定休 |
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